埼玉県北本市で子供が通っていた保育園は、ルドルフシュタイナーの考え方を実践していた。
ヨーロッパに帰ったピエールはルドルフシュタイナーの研究所を訪ねる。そこで偶然出合った天然酵母は、小麦の粒に棲息する酵母菌や乳酸菌などを、ルドルフ・シュタイナーが提唱した、デメテール・バイオダイナミック農法という自然農法で育てた小麦を培養し、乾燥したもの。
酵母菌と共生している乳酸菌など多くの菌類が自然のバランスで培養され、安定した発酵力がある。比較的酸味が少なく、小麦の風味を損なわずに製パンできる酵母だった。(この酵母の商品名はバックフェルメント、ノヴァはこの酵母をパン屋に販売している)
ヨーロッパから帰国、日本では天然酵母で発酵したパンを作るベーカリーが少しづつ増えていた。使用する天然酵母は、星野天然酵母、落健寺の天然酵母、ブッシュ・ピエールが伝えた干しぶどう酵母、この3種。
バックフェルメントは4番目の酵母として定着していく。また、このバックフェルメントは家庭でも簡単に使える商品「天然酵母 Bake at home」としてノヴァが作り販売を続けている。
「パンはご飯と同じもの、水と塩と穀物をシンプルに加工する」とピエールは言う。
有機栽培された小麦の粒をゆっくりと石臼で挽き、海から採れた塩と自然の水、小麦や果物に棲息する酵母、ゆっくりと時間をかけて発酵し、薪を焚いて暖めた石窯の中で焼き上げる。夢のようなパン作りを、一歩一歩実現していくためにノヴァは出発した。
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